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書評

マガジンハウスを創った男 岩堀喜之助 [著]新井恵美子

[掲載]2008年03月30日
[評者]赤澤史朗(立命館大学教授・日本近現代史)

■雑誌「平凡」とともに生きた男

 美空ひばりを売り出したスターの雑誌である「平凡」は、1952年末には100万部を超えた。しかしその創業者の岩堀喜之助は、雑誌社の社長の枠には納まりきらない人だった。彼は地方や都会の底辺で働いている「平凡」の若い読者を、レクリエーションの団体である平凡友の会に組織して、さらに全国各地にレクリエーションのセンターまで作ろうとした。

 岩堀のこうした発想は、娯楽を通して大衆を動かしていく、彼の戦時中の国家宣伝の経験から生まれたように思える。敗戦直後の「平凡」の創刊スタッフは、岩堀がかつて勤務した陸軍の対中国人向けの宣伝部隊や大政翼賛会宣伝部の時代の同僚が主力であった。しかし社員にも読者にも家族のような結びつきを求めた彼のもくろみは、「平凡」が巨大なメディアに成長し雑誌編集のプロが育つにつれ、社内での彼の孤立化をもたらしていく。

 岩堀の生涯は奇妙なエピソードに満ちている。彼は大雑誌社の社長になっても底辺で働く読者を意識してか、用務員同様の格好をしていたという。多くの挿話を通じて、無鉄砲にも見える行動力の人だった岩堀の、夢と孤独を描いた本といえよう。

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