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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]南塚信吾> 記事 書評 世界史をどう教えるか―歴史学の進展と教科書 [編]神奈川県高等学校教科研究会社会科部会歴史分科会[掲載]2008年04月06日 ■歴史像を変えるための良き指南書 戦後の日本においてごく最近まで、世界史は、大学などの歴史研究者よりも、高等学校などで世界史を教える現場の先生たちの地道な努力によって支えられてきたと言って、過言ではない。 その現場にいる神奈川県の先生たちの危機意識から本書は生まれている。「日進月歩の歴史学研究の進展」の中で、「私たちの認識は、ややもすると自分たちが習った時代のまま」なのではないかと。確かに、80年代以来、歴史研究の変化は著しいものがある。本書は、60〜70年代の世界史教科書と比較しつつ「この三十年ほどの歴史研究の進展」をどのように把握して、それを生徒に教えるかを考える10本の論考からなっている。 以前の世界史教科書では、ヨーロッパを中心とした視点から、古代―中世―近代へと段階的に発展する各国史が集められて世界史とされていたが、現在はどうなのか。 まず、ヨーロッパ中心の歴史の見方や概念が各地域の歴史に即して修正されている。たとえば、インドのカースト制度もイギリスが作りあげたものであると。また、ヨーロッパなり中国なりを、輪郭の明確な歴史的単位としてではなく、まわりの世界との交流の中で展開するものと見るようになっている。そして、「海の道」や「イスラーム・ネットワーク」といった観点から、ヨーロッパ、アフリカ、中東、南アジア、東南アジア、東アジア、そして日本など諸地域を関連付けて考える方向が示されているのだと言う。 歴史研究の変化を大きく見た場合、確かにそうである。歴史の専門的研究者よりも、歴史教育者のほうが、大局的に世界史を理解しているのではなかろうか。表現上の工夫が欲しい点も見られるが、本書は全国の世界史教育者へのメッセージである。だがさらに、歴史研究者にたいしても、そのテーマを常に広い世界の中で考え直す必要があるというメッセージを発し、世界史研究者と教育者の交流の促進を訴えている。そしてなによりも、本書は、われわれ読者にとって、歴史像を変えるための良き指南書なのである。 ◇ 小林克則・早川英昭監修、松木謙一・古川寛紀・石橋功ら10人で執筆。
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