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ここから本文エリア 現在位置:asahi.com>BOOK>書評>[評者]広井良典> 記事 書評 3年で辞めた若者はどこへ行ったのか―アウトサイダーの時代 [著]城繁幸[掲載]2008年04月06日 ■組織の論理から独立した個人の行方 この本はある意味で“右からも左からも批判される”書物である。保守派からは「組織の秩序をこわす」、旧来型左派からは「競争主義的である」といった理由で。しかし本書はそうした批判を超えた内容を多く含む書物である。 本書はベストセラーとなった『若者はなぜ3年で辞めるのか?』の続編だが、タイトルは「3年で辞めた」若者がその後どういう道を歩むことになったかという文字通りの意味とともに、前作で著者が徹底して批判した「昭和的価値観」の先に開かれる、新たな展望を論じた内容であることを示すものだ。 全体を通じての著者の主張の基本線は、組織や集団の論理からの「個人の独立」といえるだろう。本書の前半では外資系やIT業界、MBA留学といった話題が取り上げられるので、ビジネス系の“サクセス・ストーリー”志向の内容かという印象を一瞬与えるが、中盤から「独立」の内容は大きく多様化し、バーテンダー、出家僧、フリーター雑誌、NPO等々といった事例が具体的な形で論じられるとともに、「スローワーク」的な価値観にも理解が示される。そして著者の結論は、「構造改革の本質とは、新たな利益の再分配モデルを作り出すこと」「『労働者が適正な報酬を得られるシステム』を確立し、次世代をにらんだ利益配分システムを作り出すこと」に収斂(しゅうれん)する。 「最近の若者」が、一般に論じられているよりもはるかに「優秀」であり、「それ以前の世代よりはずっと努力している」という指摘を含め、著者の議論には共鳴できる部分が多い。結局、日本社会にとっての課題は、(1)“ウチ”と“ソト”を明確に区分するような農村型の関係性や行動様式から脱却し、集団を超えたつながりや規範原理を築いていくこと、(2)制度改革のための具体的な政策やビジョンを提示していくこと、に集約されるだろう。一部の言及を除き、著者の視野の中にヨーロッパの社会モデルがほとんど入っていないのが残念だが、今後の日本社会のあり方をめぐる議論を喚起するに十分な内容をもった本である。 ◇ じょう・しげゆき 73年生まれ、人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表。
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