[掲載]2008年4月13日
■文学を広げ、縦横にパワーを発揮
小松左京の未完の長編『虚無回廊』には「人工知能」ならぬ「人工実存」が登場する。彼らが宇宙へと乗り出し、次々と他の生命体に接触してゆくこの物語こそ、小松の「実存」にかける思いが炸裂(さくれつ)した傑作だ。人とは何者であり、どこへゆくのか。この根源的な問いに向かうため小説のみならず学問領域やメディアの創出にまで縦横にパワーを発揮してきた小松左京は「作家」という概念を広げたのだ。
これまで小松は何冊か自叙伝を著してきたが、本書はその総集編ともいえる内容だ。第1部は新聞に連載された自伝エッセー、そして全体の7割を占める第2部は小松自身が発刊してきた「小松左京マガジン」連載の解題インタビュー記事。その末尾には初めて小松が詳細に語った、大学時代の友人で作家の高橋和巳についての回想もある。
本書は確かに小松が書き、語った自伝なのだが、同時に小松から言葉を引き出し続けた小松左京研究会という“聞き手”たちの総決算でもあると感じられた。そして「最後に考察エッセイをやってみたい、宇宙にとって生命とは何か、知性とは何か。それから文学とは何か」と幾度も語り、生涯の大きな課題に意欲を燃やす小松の言葉が強く印象に残った。これこそ小松左京が発信し続けてきた「希望」だろう。その作品の刊行を心から待ちたい。
著者:小松 左京
出版社:日本経済新聞出版社 価格:¥ 2,625
著者:小松 左京
出版社:角川春樹事務所 価格:¥ 580
出版社:イオ 価格:¥ 1,000