[掲載]2008年4月13日
■「敵だから殺す」と自分に言いきかせ
ラップ大好きな少年が、音楽大会に出るため町に出かけた。ところが一帯は反政府ゲリラに襲撃される。家に戻ろうとしたが、あたりは死体だらけで家族の生死も分からない。どうすればいいんだろう。少年はあてもなく歩きはじめる。
西アフリカ・シエラレオネで93年、12歳のイシメールに実際に起きた事件である。
食べものを盗み、野宿しながら、やっと政府軍のいる村にたどりつく。しかしそこもゲリラに囲まれた。少年は自動小銃を渡される。お前の家族を殺した連中だ、やつらを皆殺しにしろ!
最初は引き金を引けなかった。しかし、1人を殺すとあとは平気になった。
目の前で人間の頭に穴があき、血が噴き出す。捕まえた敵ののどに銃剣を突き刺し、「鋸(のこぎり)刃を当てて回しながら」かき切る。敵だから殺さなければいけないんだ、と自分にいいきかせつつ。
この数年、子ども兵関連の本が相次いで出版された。しかし子ども兵本人が書いた本はこれが初めてだ。崩壊した国家で子どもたちに何が起きていたのか。その現実が本人の口から生々しく語られる。
私も数年前、シエラレオネで元子ども兵の取材をしたことがある。
ある少女は11歳の朝、登校した校門でゲリラに拉致され、兵士にされた。命令で、捕まった住民3人を目の前で射殺する。そうしなければ自分が殺されていたから。
イシメールに起きたことは、この国の子どもたちにはごくふつうに起きていたことなのである。
その後、イシメールはシエラレオネを脱出し、NGOのつてで米国に渡る。彼らの支援で大学に行き、この本を書いた。
記述は具体的だ。物語の展開にリズム感があり、読者はぐいぐいひきこまれる。大変なストーリーテラーの才能である。
こうした才能のある子どもたちの多くが兵士として殺され、または人を殺した悪夢から立ち直れないでいるのだろう。そんなことを思ってしまう本でもある。
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忠平美幸訳/Ishmael Beah 80年生まれ。国際人権NGOで活躍中。
著者:イシメール・ベア
出版社:河出書房新社 価格:¥ 1,680