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書評

刈りたての干草の香り [著]ジョン・ブラックバーン

[掲載]2008年04月20日
[評者]唐沢俊一(作家)

■B級だけど傑作、50年経て新鮮

 「早過ぎた才能」という言葉がある。もっとも実際には“今読むには遅過ぎた”才能でしかないものが大半だが。

 しかし、世の中には本当にその登場が早過ぎて、この現代まで真の評価を待っていた作家というのがいる。デビュー作である本書が刊行50年目にして翻訳されるジョン・ブラックバーンは、まさにそんな人物だ。旧ソ連との冷戦状況やナチの亡命者などが登場する設定はさすがに古びているが、メーンとなるアイデアは、まるで昨今のホラー映画やゲームの原作と言われても通るほど斬新である。逆に言えばブラックバーンの作品が受け入れられるには、サブカルチャー文化が浸透し、B級ホラーや怪奇ファンタジーにわれわれがなじむまでの土壌整備期間が必要だったのだ。

 そして、そんなB級的設定を、確かな構成力と抑制された描写力が支えている。たとえばクライマックスで描かれる“恐怖”の存在の描写を、スティーブン・キングやD・R・クーンツの饒舌(じょうぜつ)と比べてみるといい。これは怪談ばなしの本場である英国の、“本当に怖いところは読者の想像にまかせる”という伝統に裏打ちされた高度なテクニックなのだ。かつて創元推理文庫で彼の本を追いかけていたオールドファンには感涙、若い読者には新鮮な驚きを与えるであろう傑作ホラーである。

     ◇

 霜島義明訳

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