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叱り叱られ [著]山口隆

[掲載]2008年4月20日

  • [評者]重松清(作家)

■まっすぐで、過剰なまでの「好き!」

 書店ではおそらく「音楽」「サブカル」の棚に並んでいるだろう。ロックバンド・サンボマスターの山口隆が敬愛する先輩たちを迎えた対談集である。ゲストは山下達郎、大瀧詠一、岡林信康、ムッシュかまやつ、佐野元春、奥田民生という錚々(そうそう)たる6人。しかも皆、1976年生まれの山口隆よりずっと年上――最年少の奥田民生でさえ1965年生まれ、最年長のムッシュかまやつに至っては1939年生まれなのである。

 そんな偉大なる先達を相手に、山口隆はとにかく生意気である。笑い交じりとはいえ「岡林信康がそんなことでどうするんですか!」とハッパをかけ、大瀧詠一に「なんだよそれ」とツッコミを入れ、「ライターに責められてるみたい」と山下達郎を苦笑させて……。

 ところが、その生意気さが逆に、取材慣れしているはずの大御所たちの心を開く。「君を見てたら、つい心を許しちゃってね」と大瀧詠一が言い、奥田民生が「ほんとにうっとうしいよ」と笑うのは、山口隆の生意気さがゲストに対する「好き!」で貫かれているからだ。山下達郎への「僕は好きだから言っちゃうんですよ」の言葉に嘘(うそ)はないし、それは他のゲストにもあてはまる。トリビュートだのリスペクトだのといった近ごろ流行(はや)りの横文字からはあふれ出てしまう、過剰なまでの「好き!」があるからこそ、山口隆の言葉は無礼ではあっても非礼には響かない。問いかける内容も、ゲストをたじろがせるほどの接近戦となる。そして、大御所たちもその思いに応えて、時にはおとなげなくムキになってまで、心情を吐露するのだ。

 〈とにかく断絶をなくしたいんだ〉と山口隆は言う。〈その素敵(すてき)な行為の一つとして、この本を出すことにしました〉と、いきなり丁寧な口調になって言う。そうか。世代や文化の断絶を打ち破るのは、暑苦しいまでにまっすぐな――サンボマスターの曲のように一途な思いなのかもしれない。書店に「コミュニケーション」の棚があるなら、ぜひ、そのど真ん中にうっとうしく並べていただきたい。

    ◇

 やまぐち・たかし 「サンボマスター」の唄(うた)とギター担当。03年にメジャーデビュー。

表紙画像

叱り叱られ

著者:山口隆(サンボマスター)

出版社:幻冬舎   価格:¥ 1,600

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