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書評

母に歌う子守唄―その後 わたしの介護日誌 [著]落合恵子

[掲載]2008年04月20日
[評者]久田恵(ノンフィクション作家)

■母への愛に満ちた献身と奮闘の記録

 介護の渦中にあった頃は、介護体験の本を読むのはつらかった。自分の中がもういっぱい、いっぱいで、入る余地はありません、という感じ。

 でも、長い介護の日々に終止符が打たれてしまったら、どっかがぽっかり空白状態で、さびしくてたまらない。

 そんなこともあって、引き寄せられるように手にとって読んだのが本書である。

 著者の既刊本、『母に歌う子守唄(うた)』の続編で、在宅で母を看取(みと)ることとなった3年余りの介護の日々が綴(つづ)られている。

 母の眠る部屋の室温や湿度に目配りをし、体温の上下に一喜一憂し、スプーン1杯の美味(おい)しいもののために奮戦する。配慮のない医者の言葉に憤慨し、花が咲いたと言っては寿(ことほ)ぎ、今日のお天気が素敵(すてき)だから、と言っては元気を取り戻す……。

 著者の母への愛に満ちた献身の介護記録である。

 仕事と介護を両立させるべく奮闘する著者の日常のひとコマ、ひとコマが、丁寧に選ばれたあたたかな言葉で描かれている。読んでいると、読み手の私の介護の日々もまたいきいきと蘇(よみがえ)っていく。母の口元から不意にこぼれ出た言葉とか、笑わせようとわざと道化て見せるたびに父の見せた微笑など。

 そう、振り返れば、著者の語るようにそれは濃密な日々だった。

 介護をしながら、実は母や父に支えられていた。共にいることで愛をもらい続けていた。つらさも悲しみもひっくるめて、生きることの意味も、老いることの意味も教えられた……。そんな思いがふつふつと湧(わ)いてきて、思わず涙がこぼれてしまうのだ。

 私は著者のように在宅での介護をやり通せなかった。ちょっとの努力だったのに、ああもしなかった、こうもできなかったと悔恨は尽きない。けれど、本書によって、親の最後の人生に寄り添えた時間が、どれほど自分にとってかけがえのないものであったかを思い出させられた。

 この本なら大丈夫。介護中の疲れた人を励ましてくれる。介護後遺症に陥った人をきっと癒(いや)してくれるだろう。

    ◇

おちあい・けいこ 45年生まれ。作家。児童書専門店「クレヨンハウス」主宰。

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