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書評

あなたがいるから、わたしがいる [著]メリッサ・フェイ・グリーン

[掲載]2008年04月27日
[評者]松本仁一(ジャーナリスト)

■エイズ孤児を引き取り、育て続けて

 アフリカでは、孤児は地域共同体が吸収して育て、社会問題化することはなかった。しかしHIV(エイズ)の出現で、共同体の吸収力を大きく超えてしまう。庇護(ひご)を失った孤児は路上に放り出されることになった。

 世界には1300万人のエイズ孤児がいる。うち1200万人がアフリカに集中しているという。これは、そうした孤児を引きとったエチオピア人主婦の奮闘記である。

 ハレグウォインは、首都アディスアベバの高校長夫人として幸せな中流家庭の生活を送っていた。ところが40歳代なかば、夫を心臓発作で失い、次いで娘をがんで亡くす。

 世捨て人のようになっている彼女のところに99年、教会の司祭がエイズ孤児の女の子を連れてくる。ハレグウォインは、喪失感を埋めるようにその子の世話をしはじめた。私の肺にまた空気が入ってきた、と感じつつ。

 それからが大変だ。うわさを聞いた人々が次々にエイズ孤児を連れてくる。子ども好きなハレグウォインは断りきれない。昨日は兄弟、今日は赤ん坊……。03年、その数はついに30人を超した。

 そこへ欧米人夫婦が養子を求めて訪れる。この本の著者もその一人だ。食事とベッド、そして愛情。孤児たちにそういう生活を与えようと、ハレグウォインは養子を欧米に送り出しはじめる。

 ジャーナリストである著者が米国の新聞に彼女のことを書いたため、多額の寄付が集まった。それをめぐるやっかみ、密告、突然の逮捕。大波に翻弄(ほんろう)されながら、彼女はなお孤児を育て続ける。

 日本のエイズ問題はまだ一般には深刻にとらえられていないようだ。しかしアフリカではそれが隣近所にあふれ、日々の生活に荒々しく入り込んでくる。そんな現実を、襟首つかんで見せつけられるような迫力がある。

 本には「エチオピアとは」「エイズとは」「製薬会社の問題」などの一般的な解説が織りまぜて書かれており、そのたびに読者はハレグウォインへの没入を断ち切られる。現地取材がすばらしいだけに、少し残念な構成である。

   ◇

 There Is No Me Without You

 入江真佐子訳、/Melissa Fay Greene 米ジャーナリスト。

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