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書評

もう一回蹴りたかった [著]望月重良

[掲載]2008年05月04日
[評者]佐山一郎(作家)

■難病と闘い、「弱者の心」に気づく

 見た目の屈強さとは裏腹、プロスポーツ選手に身体の異変は付きもの。比較的最近では「エコノミークラス症候群との闘い」という副題を持つ高原直泰著『病とフットボール』が話題を呼んだ。そして本書もまた重い病を予感させるタイトルなのである。

 著者は1990年代後半のJリーグで活躍した元日本代表ミッドフィールダー。サッカーどころの清水に生まれ、小、中、高、大学の各段階で全国制覇を果たし、名古屋グランパス時代には天皇杯優勝歴もある。2000年10月にレバノンで行われたアジアカップ決勝、対サウジアラビア戦(1―0)では貴重な決勝ゴールを決めている。

 そんなサッカーエリートが2005年、31歳時点で「特発性大腿(だいたい)骨頭壊死(えし)症」の診断を下されてしまう。難病であることをひた隠しに隠しながら再起への執念を燃やす過程で望月は初めて「弱者のメンタリティー」にめざめる。横柄、生意気といわれたサッカーエリートが限界を悟り新たに指導者をめざす姿は、嵐が過ぎたあとに訪れる静穏そのもの。ヒーリング効果に近い読後感がもたらされた。

 蛇足になるが、美談以上の深みがあるのは渡辺達也の筆力によるところが大。表紙を見るだけでは共著の実体がわかりにくい本作りは、スポーツ関連書に多い悪習である。

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