[掲載]2008年5月11日
■同時代の潮流のなかで位置づける
帝国の版図拡大とともに、日本の建築家たちは台湾や朝鮮、中国の租借地や鉄道経営地に活躍の場を求め、洋風建築やモダニズム建築の優れた作品を多く残した。
建築家に焦点をあてると、彼らの仕事は「日本の建築」の一部になる。対して活動場所でみると、それぞれの地域の建築物として評価されるべきものだ。そのあいまいさゆえに、「植民地建築」は十分に語られることがなかった。
この空白を埋めるべく、著者は20年を超えて研究を継続してきた。集大成である本書は、列強のコロニアル建築と比較し、同時代の世界の建築潮流のなかに日本の「植民地建築」を位置づけることで、日本のみならず東アジア各国の近代建築史学にとっても重要な見解と論点をいくつも示す。
以前、中国の東北地方をめぐった際、大連やハルビンなどで、かつて満鉄が建設した主要な建築が「保護建築」に指定されており、戦時下に日本が建設した建物をも地域の歴史を伝える文化遺産として保全と利活用がはかられている事例を、目のあたりにしたことを思い出す。
「植民地建築の存在は、絶えず日本と日本人に植民地支配を風化させないための信号を送っている」という結びの言葉に、著者の思いが集約されている。
著者:西澤 泰彦
出版社:名古屋大学出版会 価格:¥ 6,930
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