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アラブ・ミュージック―その深遠なる魅力に迫る [編]関口義人

[掲載]2008年5月11日

  • [評者]小杉泰(京都大学教授・現代イスラーム世界論)

■未知の音楽空間にハマッてみては

 世界のさまざまな音楽が日本に入ってきて、最初は熱狂的ファンだけに支持されたものが、いつしか耳慣れて、私たちの日常的な音楽生活の一部になっている。その例外がまだあるとしたら、アラブ・ミュージックである。アラブの多様なジャンルの音楽に魅せられた10人の執筆者の、その面白さを少しでも日本に伝えたい、という思いが本書には詰まっている。

 それぞれのハマリ方は、アラブ音楽に尽きせぬ楽しさがあることをよく物語っている。「フェイルーズへの旅」で、写真家の石田昌隆は、レバノンの歌姫フェイルーズの曲を初めて耳にしてから、ついに13年後にレバノンでの公演を生で聞くまでのアラブ音楽遍歴を語る。各地をめぐる求道の旅のようでもあって、迫力がある。

 アルジェリアのポップ音楽「ライ」は、今ではフランスで、移民だけではなくフランス人にも人気があるという(粕谷祐己)。元来はモロッコの周辺的な民俗音楽「グナワ」は、毎年40万人が集まる音楽フェスティバルを開いている(サラーム海上)。カイロは今でも2億6千万人向けのアラブポップスの中心であるが、衛星テレビが多極化を促し、ポップスも多様化の時代を迎えている(中町信孝)。このようなことを知ると、どうやら未知の巨大な音楽空間があることがわかる。

 カタカナの人名は初めはとっつきにくいかもしれないが、「モロッコのビートルズ」「砂漠のブルース」などとたとえられると、門外漢にも親近感が湧(わ)いてくる。

 楽器の紹介と説明(若林忠宏)、トルコやイランの音楽の全体像(編者)などもあって、広がりのある案内となっている。古典的なアラブ音楽の見取り図を執筆している松田嘉子は、ウード奏者としても知られるようになってきた。ウードは西洋のリュートの基となった弦楽器で、巨大な半球形の胴体から、力強く美しい音色を響かせる。

 本文中やディスクガイドでCDが紹介されているので、読後には、ぜひとも、実際の演奏と歌を聴いてみたくなる。

    ◇

 せきぐち・よしと 50年生まれ。音楽評論家。著書に『バルカン音楽ガイド』。

表紙画像

バルカン音楽ガイド

著者:関口 義人

出版社:青弓社   価格:¥ 1,890

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