[掲載]2008年5月18日
■なぜ、平穏な暮らしを奪われたのか
新聞の読者が記者に期待しているのは、論文や評論などではなく、読者が行けない現場からの生々しい報告なのではないだろうか。
『戦争と民衆』の著者は新聞記者だが、治安の崩壊したイラクにひたすら通いつづける。イラク戦争がイラクの人々に何をもたらしたか、それを現地から報告するために。
著者自身がハイウエー強盗に襲われた。覆面の男たちに車をとめられ、銃を突きつけられる。小さな娘の顔が頭に浮かび、死にたくないと思う。そのときふと、銃を構える男の手が震えているのに気がつく。素人の強盗だ。
平凡に暮らしていた市民を強盗に変えてしまう。イラクをそんな国にしたのはだれなのか。著者の体験を通じて、読者は明確に理解する。
米軍の支配にイラク大衆の反発は強まっている。米軍に攻撃をしかけているのは、アルカイダなどより、生活を破壊されて怒る大衆なのだと著者は感じている。
『アンディとマルワ』は同じテーマを、戦死した米兵と負傷したイラク人少女に焦点を当てて掘り下げている。著者はドイツの保守政党「キリスト教民主同盟」(CDU)のスポークスマンだった政治家だ。
ヒスパニック系の米人高校生アンディは18歳。景品の重量挙げ用グラブがほしくて海兵隊の資料請求をする。しかし家にやってきたのは徴募官だった。
訓練後、予備兵にもかかわらず最前線に送られ、バグダッド陥落2日前の03年4月7日、砲弾に吹き飛ばされる。同じ日、12歳のイラク人少女マルワは自宅前にクラスター爆弾が落ち、右足を失った。
著者はバグダッドに行ってマルワに会い、米国を訪れてアンディの家族に会う。そして、なぜ彼らがそんな目に遭わなければならなかったかと問いかける。
イラク戦争の開戦から5年がたった。ブッシュ大統領は、状況は改善されつつあると語る。しかし当のイラク駐留米軍司令官が4月、米軍の撤退は中断すべきだと提言した。どちらが真実か。この2冊だけからも明らかだ。
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『アンディ――』平野卿子訳/Jurgen Todenhofer
著者:小倉 孝保
出版社:毎日新聞社 価格:¥ 1,785
著者:ユルゲン・トーデンヘーファー
出版社:岩波書店 価格:¥ 1,785
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