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加害者は変われるか?―DVと虐待をみつめながら [著]信田さよ子

[掲載]2008年6月1日

  • [評者]耳塚寛明(お茶の水女子大学教授・教育社会学)

■敵視するだけでは解決にならない

 家族は、正真正銘の暴力をしつけや夫婦げんかとして長い間隠蔽(いんぺい)してきた無法地帯である。著者は、『アダルト・チルドレンという物語』などを通じて、機能不全家族を告発してきた臨床心理士である。

 DV(ドメスティック・バイオレンス)や虐待にかかわる援助者は、最近すっかり被害者支援、ケアへと力点を移した。被害者に集中し、加害者を敵視するだけの現場の視線の中で、著者はそれでよいのかと考える。臨床事例と事例から作られた架空の挿話が、加害者とは誰か、彼らは変われるか、被害者はなにを望んでいるのかを問う。

 加害者の多くは、虐待とDVの被害経験者、目撃者である。大人になった彼らにとって、妻は自分の思い通りになりどんな自分も受け入れてくれる「母」(であるべき)なのだ。加害者を敵視するだけの問題構成は、そうした理解を妨げ適切な対処方策から目をそらせてしまう。彼らは特殊ではなくどこにでもいる。

 著者には、虐待やDVの根を個人の心理に求めるのではなく、夫と妻、親と子の間の非対称的な権力関係の中に位置づける社会学的発想が見える。心理学界ではやや異端かもしれないが、私には常套(じょうとう)手段にとらわれずに真の被害者支援を追求する、勇敢な実践家に思えた。

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