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ここにいること―地下鉄サリン事件の遺族として [著]高橋シズヱ

[掲載]2008年6月1日

  • [評者]多賀幹子(フリージャーナリスト)

■悩み戸惑いながら、家族再生へ

 著者は、95年3月の地下鉄サリン事件で、霞ケ関駅助役だった夫を失った。平穏な生活を一瞬にして奪われた後は、“被害者遺族”として裁判の傍聴、証人として出廷、さらにメディアへの対応を続けた。壁に当たるとその都度、人々との出会いから新たに進む方向を見いだしてきた。その軌跡を克明に綴(つづ)る。

 中でも「地下鉄サリン事件被害者の会」代表世話人としての活動の広がりには、目を見張るものがある。アメリカの「9・11家族連合」副会長を招き、阪神淡路大震災などの遺族と手を携え、社会全体が被害者を支援する体制を求めて奔走する。

 しかし、「空回りをしているだけか」と悩む場面も。「被害者の会のお知らせ」にアンケート用紙をつけたのに、回答は一通もなかった。アメリカから帰国後、学んだ活動を生かそうと張り切ったら、「被害者」らしくなく明るいと非難された。正直でまっすぐな著者の戸惑いが痛々しい。

 ただ、周囲から事件のことに触れられると刺々(とげとげ)しかった子どもたちが、いつしかカレーを作って帰りを待ち、母の活動に手伝いを申し出る。「自分を支える確かなものを子どもに見た」と著者。努力の継続が家族再生に結実し、胸が熱くなる。

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