[掲載]2008年6月8日
■変わる華僑の姿を追い、日中を考える
在日中国系人をどのように理解するか、彼らとどう共存・共生していくかは、今まで以上に日本社会の重要なテーマになっている。70年代以降海外に出て高等教育を受け、その後日本企業・ビジネス界・大学などで活躍している人々は「新華僑」と呼ばれる。これに対して老華僑は「三把刀(サンバータオ)」(刃物を使う調理業・理髪業・裁縫業)に象徴される生活・教育水準の低い人々のイメージであった。現在、新華僑は予備軍を含めすでに老華僑の1.5倍(31万人)になる。また、ここ十年来日本国籍を取得する中国人は毎年5千人前後を数える。『新華僑 老華僑』の共著者の劉は、国共対立の政治に翻弄(ほんろう)された華僑の歴史を描きながら、今日重要な変化が始まっており、終戦直後に形成された日本華僑社会の原型が消え去ろうとしているとみる。譚は、唐人街として知られている長崎や神戸、横浜を訪れ、指導的な人々へのインタビューを中心に「老」「新」を超えた華僑の心情に迫っている。「長崎モン」になって長崎独特の文化の一翼を担う長崎華僑、大陸も台湾も共存するフレンドリーで上品な町を生み出した神戸華僑、そして政治に翻弄されたが世界に類のない「チャイナタウンのモデル」を目指す横浜華僑、とそれぞれのニュアンスの違いを描いている点は面白い。
『日中「アジア・トップ」への条件』の著者は、まさに新華僑の草分けとも言うべきジャーナリストである。85年の来日以来、日中間の様々な矛盾や問題、なにげない日常生活のトピックについて、時に中国人からさえも批判を浴びるほど「歯に衣(きぬ)を着せぬ」率直な態度でメッセージを発し続けてきた。歴史上初めてアジアでは日中の「二強時代」を迎えた。成長する中国は多くの分野で謙虚に日本に学ぶべきだ、日本はかつて大平首相や金田一春彦との出会いで受けた「懐の深い日本」をもう一度思い起こし「寛容になれ」と訴える。本書は本紙で連載してきた随筆を集めたものだが、日本と中国への厳しくかつ温かい眼差(まなざ)し、双方の長所を生かし欠点を相補おうとする視点は一貫している。
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『新華僑―』/たん・ろみ、りゅう・けつ▽『日中―』/モー・バンフ。
ロは王へんに路。
著者:譚 ろ美・劉 傑
出版社:文藝春秋 価格:¥ 893
著者:莫邦富
出版社:朝日新聞出版 価格:¥ 777