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不平等国家 中国 [著]園田茂人

[掲載]2008年7月27日

  • [評者]天児慧(早稲田大学教授・現代アジア論)

■「回帰」ではなく「過去へ進化」するのか

 中国はこれからの国づくりのカギとして「和諧(わかい)(調和のある)社会」実現を掲げている。それは今日、格差・不平等の問題が極めて深刻であることを意味しているからに他ならない。

 本書は、自らが行った多くの社会調査をフルに活用し分析しながら、鋭くかつ説得力のある独自の格差・不平等論を展開している。市場経済の導入が経済発展とともに、格差・不平等社会を生み出した。高学歴化がその不平等な収入を生み出す要因でありながらも、学歴社会に対する中国人の不公正感は弱く、能力主義的価値観へのシフトが強く見られると指摘する。

 また都市への流入が激増する農民工(外来人口)問題も不平等・格差を象徴し、都市治安の悪化・不安定化を増大するとの通念がある。しかし実際には都市住民と外来人口の平均収入差はそれほど大きくなく、外来人口の都市生活満足度は高く、彼らが全体的に反政府的な行動に走ることは考えにくいと見る。

 もう一つ興味深いのは中間層の分析である。概念自体は多義的だが、その増大が市民社会を形成し政治体制を民主化するとよく言われる。ところが調査では、メディアや地方政府への不信感は強いが中央政府への信頼感は極めて高く、また問題解決のためにデモなどに参加せず、「コネを使う」「お上の意見を聞く」傾向が強い。つまり中国の中間層は、「民主化=体制崩壊」の担い手ではなく、社会安定への指向性が強く保守的でさえあると見ている。

 本書の問題提起と結論の関係も面白い。中国は市場経済を導入することで長く堅持してきた社会主義を自己否定した。その行方はどうなるか。これが問題提起である。そして「過去へ進化する社会主義」に向かっていると結論付ける。単なる過去への回帰ではない、進化だとの指摘に、えーっと読みなおしてしまう。しかし向かっているのはどうやら「伝統的な中華国家」である。社会主義は進化しているのか自己否定されたのか。「常識」的理解にチャレンジし、読者に知的刺激を与えてくれる好著である。

    ◇

 そのだ・しげと 61年生まれ。早稲田大教授(中国社会論)。『日本企業アジアへ』。

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