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日本人はどこまで減るか―人口減少社会のパラダイム・シフト [著]古田隆彦

[掲載]2008年7月27日

  • [評者]広井良典(千葉大学教授・公共政策)

■人口許容量と増減サイクルから考察

 2005年から日本の総人口は減少に転じているが、人口に関する議論は、特にマクロレベルで論じられる場合、ある種の“イデオロギー的な負荷”を伴いやすい。一方でそれは「人口は“国力”の基盤」といった方向に向かい、他方では「人口減少こそ望ましい」といった議論ともなる。本書もそうした側面を免れているとはいえないが、このテーマをめぐる様々な視点が独自の枠組みとともに示されている。

 本書の議論の骨格は以下のようなものだ。(1)生物における「キャリング・キャパシティー」(環境許容量)を人間社会に適用した議論が以前からあるが、著者はそれを「人口容量」として再定義する。(2)人口容量は人間の歴史において、それぞれの経済発展ないし文明の段階ごとに変化してきており、その結果人類はこれまで五つの「人口波動」(人口の増加期と安定・減少期のサイクル)を経験してきた。(3)現在は「工業現波」の時代にあたるが、その人口容量には既に達したので当面は「濃縮社会」とも呼びうる、ゆとりや文化、教育などに価値が置かれる社会となる。(4)その後人口は再び増加に転じ人口容量の枠内で増減を繰り返す。さらにその先の展望としては、現在の工業文明の延長線上にある後期工業文明=“集約”工業文明(自然エネルギーの利用など)か、それをさらに超えた文明(エネルギーそのものの創造など)が考えうる。

 著者が「濃縮社会」という方向に関して展開する議論は一定の有効性を持つと考えられるが、他方で「人口容量」「人口波動」などの概念は(著者自身も仮説と断っているが)論争的な内容を多く含んでいる。また、先進諸国間の出生率の多様性や、グローバル化の中での途上国の急速な社会変動などを考えると、より多面的な視点が必要ではないか。いずれにしても、人口をめぐる問題は少子高齢化・社会保障と環境問題、また先進国と途上国の結節点に位置するものであり、これらを包摂したトータルな視座や議論が求められているように思われる。

    ◇

 ふるた・たかひこ 39年生まれ、現代社会研究所所長、青森大社会学部教授。

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