[掲載]2008年8月17日
■夏の読書特集 新書を読もう!
『オスとメス=性の不思議』は、雄と雌がなぜあるのか、雄と雌はどうして異なるのかなど、性をめぐる生物学について、いろいろな角度から解説した本である。
93年に書いたのだが、当時、こうした研究をもとに、さらにそこから人間の男と女をめぐる問題をどのように考えたらよいのかまで扱った本はなかった。そこで、当時の目的として、行動学、進化学での最先端の研究成果をまとめ、動物の性をめぐる諸現象を解説することと、その知識をもとに人間を考える上での一つの方向性を示すことの二つを念頭にこれを書いた。
あれ以来15年もたってしまったので、もうそろそろ改訂するチャンスがあればと望んでいる。生物の性の進化に関しては、記述が大きく変わるところはないのだが、人間についての部分を少し書き換えたい。それは、研究も進んだし、私自身の人間理解も進んだからだ。
そこで、他の進化生物学者による、人間に関する書物を一つ取り上げたい。『人はなぜレイプするのか』である。これは、レイプという不愉快な現象を進化生物学から見ると、どのように探求できるのか、そして、進化生物学から理解すると、レイプを防止するためにどのような提案ができるのかを論じたものだ。本書の結論は暫定的なものだが、人間の行動を進化的に探求するための、ていねいな議論が展開されている。
『乱交の生物学』は、これまた扇情的なタイトルではあるが、たいへんにおもしろい。従来、雄は性的に積極的だが、雌というものはそうではないと思われてきた。それは、観察に基づく研究だけでなく、理論的にもそういう説明がされてきた。しかし、本当は雌だってとても積極的なのだ。さまざまな生物の雌が、どのように配偶相手を選(え)り好みし、異なる相手と多数回交尾をするか、それはなぜなのか、おもしろいエピソードが満載で、雌に対するある種の偏見を打ち砕いていく。
『ヌカカの結婚』は、「虫たちの不思議な性戦略」という副題に示されるように、小さな昆虫の雄と雌の間に繰り広げられる驚異的な行動を物語にしたてたもの。人間の話ではないので、安心して楽しめる。
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はせがわ・まりこ 総合研究大学院大学教授 52年生まれ。専門は進化生物学。著書に『オスとメス=性の不思議』(講談社現代新書)のほか、『クジャクの雄はなぜ美しい?』など。
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