[掲載]2008年8月17日
■夏の読書特集 新書を読もう!
今やそこら中にあふれている「格差と貧困」というキーワード。私が学生の頃、大人たちから投げられる言葉は「自己実現」だった。まだワーキングプアやネットカフェ難民という言葉もなく、当たり前のように就職し、うまくいけば結婚でき、年金は老後にちゃんと支給された。そんな一億総中流の時代はいつの間にか終わりを告げ、今の若者たちは「自己責任」という暴力的な言葉でおいつめられる。働いても働いても人間らしい暮らしができず、いのちや教育にかかわる医者や教師は締めつけと過剰労働で心身を病み、高齢者や障害者が容赦なく切り捨てられる社会。一体何がこの国をそんな風にしてしまったのか? そこから抜け出す手立てはあるのだろうか?
1980年、アメリカの一般労働者と企業社長の年収格差は40倍だった。それが600倍に跳ねあがったあの国のたどった道は、後追いする日本の近未来を映し出す合わせ鏡になるだろう。格差はグローバル化や技術革新といった自然経済現象のように言われるが、実は社会保障費削減、大企業擁護、国民の分断という社会制度が生み出したものであることがアメリカを見るとよくわかる。
同国の経済学者クルーグマン氏の『格差はつくられた』には、格差を生み出す政策が具体的に書かれている。政策について政治へ問いをつきつける際、もう一つ私たちが知っておかなければならないもの、それは税金の使われ方だ。ノーベル賞経済学者であるスティグリッツ氏の『世界を不幸にするアメリカの戦争経済』には、国家予算における戦争と社会保障費の関係がわかりやすく説明されている。各項目の配分を知ることで政府にノーをつきつける人々が増えているアメリカの姿は、日本の私たちに大きなヒントになるだろう。
最後に熊沢誠氏の『格差社会ニッポンで働くということ』を読むと、企業の枠を超えた連携やセーフティーネットの充実といった具体的な解決案が提案されている。若者が将来に希望を持ち、労働者が誇りを持って働け、お年寄りが安心して暮らせる社会。それは届かない理想ではなく手にするべき権利であることを、自己責任論に押しつぶされそうな若い世代に伝えたい。
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つつみ・みか 米国野村証券に勤務中9・11に遭遇。米国と日本を行き来しながら執筆。著書に『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)のほか、『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命』など。
著者:ポール・クルーグマン
出版社:早川書房 価格:¥ 1,995
著者:ジョセフ・E・スティグリッツ・リンダ・ビルムズ
出版社:徳間書店 価格:¥ 1,785
著者:熊沢 誠
出版社:岩波書店 価格:¥ 1,995
著者:堤 未果
出版社:岩波書店 価格:¥ 735
著者:堤 未果
出版社:海鳴社 価格:¥ 1,680
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