[掲載]2008年8月24日
■繁栄がもたらす「アジアのドラマ」
アジアには歴史の怨恨(えんこん)、未解決の領土など様々な問題が数限りなくある。しかし今日一つのかたまりをなし始めた。それは宗教とか東洋的精神によるものではなく、経済的実利の追求によるものであり、その発想には戦前エコノミスト赤松要が提唱し60年代初頭によみがえった、日本が主導する連鎖的な発展モデルの「雁行(がんこう)形態論」があった。そうした発展の延長上に日中印の三大勢力が併存する未来のアジアが展望される。国家の貧困、破綻(はたん)ではない、隣り合った大国同士の繁栄が何をもたらすかという意味で「アジアのドラマ」が演じられる時代と著者は見る。
しかし各国は、自ら弱点を抱えており、同時に相互不信が強い。中国は経済と社会が激しく変動する中にあるが、高い成長率が矛盾を隠している。民主化も疑わしく共産党独裁が続くだろうが、その点こそ弱点となる。日本は、バブル崩壊まで失業率は低く、80%の人がミドルクラスだと思う「理想的な社会主義」であった。その後経済が脆弱(ぜいじゃく)化し、人口減少と老齢化が始まったが、改革の効果は期待できると見る。ただし歴史問題で失敗を繰り返し、また「最古のライバル中国」が新たな競争相手となってきた。インドへのODA供与、海上安全保障協力など急速な接近を図るのはまさに中国を意識してのことだ。インドはここ十数年着実に外向きにシフトし、経済成長も加速するようになり、勢いに乗っている。規制が減れば汚職・腐敗も減り、年齢層も若いので、好循環軌道に乗れる。対外的には長年の敵だった米国との関係を改善、やがてインドは世界の重要国と認められるだろう。
アジアの未来には強い悲観主義と楽観主義が混在している。日中印は欧米の協力を求めながら汎アジア機構をまとめ、その枠組みで対立や意見の相違を取り除いていくことが必要である。これからは政治によって「アジアが創造」されねばならないと著者は説く。重要なスタートが05年末の東アジアサミットだった。3国の実情を踏まえた展望とそれらの絡み合う国際関係を考えるうえで有益な本だ。
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Rivals:How the Power Struggle Between China,India and Japan will Shape Our Next Decade、伏見威蕃訳/Bill Emmott 56年生まれ。英「エコノミスト」誌元編集長。
著者:ビル エモット
出版社:日本経済新聞出版社 価格:¥ 1,890