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自爆テロ [著]タラル・アサド

[掲載]2008年10月5日

  • [評者]香山リカ(精神科医、立教大学現代心理学部教授)

■説明しがたい戦慄の理由を明かす

 越境の思想家アサドが記した本書は、いわゆる西洋的な理解の誤りをひとつひとつ正すところから始まる。「正しい戦争」と「テロリズム」に決定的な違いはないこと、近代西洋社会が追求してきたリベラル・デモクラシーは、「人の命を救うためには人の命を奪う戦争という暴力も辞さない」という矛盾を内包する。その矛盾をさらに正当化するのが、「文明/非文明」の二項対立を下敷きとする例の「文明の衝突」論だ。これらの決めつけにより、自爆テロはきわめて単純化された動機、すなわち「何かの病的な要因か、そうでなければ、疎外、つまり、西洋文明に適切に統合されていないこと」で語られてしまうことになる。

 とはいえ、どんなに“西洋的”な文脈で片づけられても、自爆テロが人々に与える根源的なショックについては説明できない。その戦慄(せんりつ)について論じた最終章が圧巻。著者は、戦慄の理由はいずれも西洋人のアイデンティティーの破壊にかかわることであり、近代のリベラル・デモクラシーが抑圧していた暴力が明るみに引きずり出されることを指摘する。それにしても、同時多発テロから7年たった今、私たちはまだ自爆テロに戦慄する感受性を持ち得ているか。日本の読者に向けての詳細な解説を読みながら、気になった。

    ◇

 かり(=くさかんむりに列)田真司訳

表紙画像

自爆テロ

著者:タラル・アサド

出版社:青土社   価格:¥ 2,520

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