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教育立国フィンランド流 教師の育て方 [著]増田ユリヤ

[掲載]2008年10月5日

  • [評者]耳塚寛明(お茶の水女子大学教授・教育社会学)

■社会のデザインと教育プランが一致

 80年代までの教育界では「アメリカでは……」がはやり、彼(か)の地の大学入試制度やバラ色の学校生活を輸入する教育改革の提案が相次いだ。皮肉にもその後、当のアメリカで日本をモデルとする教育改革が進んで、アメリカ「ではの守(かみ)」たちは退場した。

 いま教育界の注目はフィンランドに集まる。経済協力開発機構の学習到達度調査で、連続世界一の学力を示したためである。日本はこの調査で、順位をやや下げた。学力低下不安とゆとり教育批判の中で、日本の教育界は成功の秘訣(ひけつ)を求めて尋常ならざる関心をフィンランドに向けた。

 著者は05年から5回にわたってフィンランドを訪問し、30カ所にのぼる教育機関を取材した。「どんなにスゴい教育が行われているのか」と意気込んで見たのだが、結論は「何を見ても、どんな話を聞いても、ただ単にまっとうなことを実行しているのみ」。

 とはいえ、フィンランドと日本の教育風景は相当に異なる。フィンランド教育を語るためには「すべての子どもに平等な教育を」「現場への信頼」「質の高い教員の養成」という三つのキーワードで足りる。日本の教育も、理念的にはそう違わない。異なるのは、理念を実現するための仕組みが実際に存在し機能しているかどうかだ。理解の遅い子どもを早い段階で手助けし落ちこぼれを未然に防ぐ体制、子どもたちの心の問題にチームでていねいに対処する仕組み――それらが至極当然のように、質の高い教師たちによって実際に機能している様子に、驚きを禁じ得ない。

 なぜそれが可能か。著者は言う。「社会のデザインと教育プランが見事なほどに一致」している。どういう社会を作りたいのか、そのために教育はどうあるべきかが国レベルから現場レベルまで一貫している。こう看破する著者に導かれて、私たちは、「なぜ社会と学校現場の間でネジレが生じ、まっとうなことをそのまま実行できないのか」という核心的な問いにたどり着く。答えるのは容易ではないが、「ではの守」たちによる類書をはるかに凌駕(りょうが)する洞察といってよい。

    ◇

 ますだ・ゆりや 64年生まれ。教育ジャーナリスト。『「新」学校百景』など。

表紙画像

教育立国フィンランド流教師の育て方

著者:増田 ユリヤ

出版社:岩波書店   価格:¥ 1,680

表紙画像

「新」学校百景―フリースクール探訪記

著者:増田 ユリヤ

出版社:オクムラ書店   価格:¥ 1,680

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