現在位置:
  1. asahi.com
  2. エンタメ
  3. BOOK
  4. 書評
  5. [評者]天児慧
  6. 記事

変わる中国 変わるメディア [著]渡辺浩平

[掲載]2008年10月5日

  • [評者]天児慧(早稲田大学教授・現代アジア論)

■自主経営で視聴率争い、ネット世論も

 変わる中国を語るとき、猛烈に発展・増強する経済、軍事力、外交といったハード面の変化が多い。本書はソフトな部分であるメディアの変貌(へんぼう)とそれに伴う人々の意識や行動の分析から、変わる中国に接近している。党と国家の宣伝機関であったメディアは市場化の波の中で98年にはその約90%が自主経営となった。新聞は地方も含め党機関紙の読者離れが顕著となり、商業紙、生活紙に人気が集まる。テレビも衛星放送が一気に広がり中央レベル16、省レベル31と、一般に見られるものが47チャンネルにもなった。そこでは激しい視聴率争いが展開され、特に娯楽番組の工夫が目立つ。05年8月湖南衛星テレビのアイドルオーディション番組「超級女声(スーパー歌姫)」では、一般によるメール投票選考(総数815万票)が行われ、実に4億人の視聴者を集め大人気を博した。筆者は05年が新たな社会現象が生まれた分水嶺(ぶんすいれい)だという。この年の春、実は北京、上海など多くの都市で激しい「反日デモ」が起こり、日本のマスコミは「反日一色」報道を繰り返していた。なんと対照的な状況の取り合わせか。もっとも新聞・テレビに当局からの規制がなくなったわけではない。やがて氾濫(はんらん)するこの種の娯楽は当局により低俗文化として規制が加えられるようになる。

 しかし、インターネットによる表現の「自由空間」は容易に減少しない。率直な意見が飛び交う「ネット世論」、趣味嗜好(しこう)を同じくする「小衆」、携帯動画を取り入れた投稿サイト「土豆網(ポテトネット)」などが続出している。ユーザーは08年2月で2億2千万を超え米国を抜き世界トップ、その80%以上が35歳以下、特に80年代以降生まれの一人っ子世代がその主流となった。もっともここでも自己規制、フィルター規制、検閲はある。国策に反する議論、台湾、少数民族などデリケートな問題は規制される。強固な共産党体制も内部から徐々に蝕(むしば)まれているのか、それとも新しいシステムをつくり出す脱皮を始めているのか。ネット空間は加速度的に増加していると結んでいる。

    ◇

 わたなべ・こうへい 58年生まれ。北海道大学准教授(広報広告論)。

検索フォーム
キーワード:


朝日新聞購読のご案内

ここから広告です

広告終わり

検索

POWERED BY Amazon.co.jp