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ぼくは猟師になった [著]千松信也

[掲載]2008年10月19日

  • [評者]松本仁一(ジャーナリスト)

■渾身の力で「どつく」、命のやりとり

 京都大学を出て猟師になってしまった男の物語である。

 世の中的には「京大卒」と「猟師」は両立しないイメージだ。しかし著者の中ではまったく矛盾していない。

 「野生動物が好きだ――獣医を志望するが挫折――柳田民俗学に出会い、自然に敬意を払う生き方を知る――京大文学部へ――バイト先でわな猟と出会う――これだ、と思う」と、ごく自然に流れていく。そして今や猟歴8年のプロである。

 山のあちこちにわなを仕かける。けもの道を知り、そこを通る動物一匹一匹の習性(=自然)を知らなければ仕かけることはできない。

 銃は遠く離れて命を奪うが、わなでは、捕まえた動物を自分の手で殺さなければならない。どうやって殺すか。棒で「どつく」のである。

 初めての獲物は雌シカだった。覚悟を決め、棒を握ってシカに近づく。そして「渾身(こんしん)の力をこめてシカの後頭部をどつきました。一発でした」となる。

 大きなイノシシをどつきそこね、逆襲されてあわやということもあった。命のやりとりなのである。

 動物の体を感じながら殺す。それによって「命を奪うこと」の重大さを知る。肉を与えてくれた動物に感謝しながら食べる。それは、スーパーのパック肉とは根本的に違うのだ、と著者はいう。

 猟場は京都郊外の山の中だ。京都にはこんなにシカやイノシシがいるのか、と驚く。猟期になると仕事も手につかない人々を雇ってくれる会社があるのに、また驚く。

 本の後半は、獲物をどう料理するかのレシピ集になっている。写真付きで食欲をそそるのだが、ちょっと分量が多い。それを少し削っても、猟の体験談をもっと書き込んでほしかった。

 たとえば、タヌキやサルがかかったときは「リリースする」とあるが、暴れる彼らをどうリリースするのか、かまれたりしないのか。そんな事実こそ読みたい。

 それにしても破天荒な本で、一気に読んでしまう。イノシシのあぶり肉、うまそうだなあ、と思いつつ。

    ◇

 せんまつ・しんや 74年生まれ。京都大学文学部在学中に狩猟免許を取得。猟師。

表紙画像

ぼくは猟師になった

著者:千松 信也

出版社:リトル・モア   価格:¥ 1,680

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