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原爆投下とトルーマン [著]J・サミュエル・ウォーカー

[掲載]2008年11月9日

  • [評者]赤澤史朗(立命館大学教授・日本近現代史)

■自国兵と敵国人の命の価値は

 原爆投下に関するアメリカ指導者の意図を検討した、定評ある研究の翻訳である。原爆投下を正当化するアメリカ指導者の説明は、原爆を使わなければ日本本土上陸作戦は不可避で、100万人の米兵の犠牲が出ただろうとするものだ。これに対し、原爆はソ連に対するアメリカの外交的優位を作り出す目的で投下されたという批判論が出され、両者の論争が続いた。

 著者によれば80年代には学界の共通の合意として本土上陸作戦に代わる唯一の代替案が原爆投下という説は否定され、100万人の米兵の犠牲という数値は誇張されたものだということが認められたという。ただし著者は詳細な検討の結果、トルーマンの原爆投下の決定には、戦争の早期終結の意図と主観的には何千人かの米兵の犠牲を避けようという「人命救助」の観点が大きかったことを認めている。

 この結論は、われわれを複雑な気分にさせる。戦時期の日本とは違って、アメリカでは自国兵士の「人命」の価値が、政策判断に影響するくらい高かったのである。だがそれは、原爆投下で数多くの敵国人が殺される可能性を、まともに考慮しない姿勢と結びついていた。自国民の「人命」の価値の高さが、敵の民間人の大量殺戮(さつりく)をためらわないことにつながる怖さを示す結論ともいえよう。

    ◇

 林義勝監訳

表紙画像

原爆投下とトルーマン

著者:J.サミュエル・ウォーカー

出版社:彩流社   価格:¥ 1,995

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