[掲載]2008年11月16日
■時代の先端語る輝きと躍動感
1962年にオープンした日本初の芸術映画専門上映館、アートシアター新宿文化の支配人であり、映画製作会社ATGのプロデューサーであった葛井欣士郎に、75年生まれの映画研究家がインタビューした聞き書きである。60年代、70年代の東京で青春を送った人々には、たまらなく懐かしい内容だろうし、「遺言」というタイトルのとおり、あとの世代にとっては、その時代の文化のある側面を知るための貴重な記録である。三島由紀夫をはじめ、そうそうたる顔ぶれの作家、芸術家、映画監督、演出家、俳優たちの活動も興味深い。
アートシアター新宿文化が、オープン時の上映作品「尼僧ヨアンナ」をはじめ、今では不朽の名作とされる海外の名画を多数日本に紹介したことや、ATGが日本の映画史に残した足跡の大きさを再認識した。また、アートシアター新宿文化と67年オープンの地下小劇場、蠍(さそり)座で展開した実験演劇活動を振り返ると、現在の日本では、前衛演劇がいかに沈滞しているかを思わざるを得ない。60〜70年代は、ベトナム戦争反対運動や学生紛争を背景に価値観の大転換が起き、芸術も時代にふさわしく反骨精神に富んでいた。映画や演劇のみならず、当時の社会思潮が、時代の先端を行った人の肉声で語られる輝きと躍動感がある。
著者:葛井 欣士郎・平沢 剛
出版社:河出書房新社 価格:¥ 2,940
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