[掲載]2008年12月21日
(1)またの名をグレイス(上・下) [著]マーガレット・アトウッド [訳]佐藤アヤ子
(2)錦 [著]宮尾登美子
(3)ジョークで読む国際政治 [著]名越健郎
私の読書は限られている。数多い出版物のほんの一部を瞥見(べっけん)しているレベルだ。その中から心に残ったものを、ということで(1)は出色の長編小説と信じた。内容は150年も昔の殺人事件に関(かか)わった美少女の精神を多角的に追い求める、というもの。ミステリーの味わいがなくもない。だが、小説の技法が広く駆使されていて、同業者として舌を巻く。描写の視点がバラバラでも読み終えると、まとまっている。表面的に味わうものとはまたべつな小説職人アトウッドの真骨頂を感じた。
(2)は宮尾登美子の長い筆歴の、一つの集大成として快く読んで堪能した。“龍村の帯”で知られる織物の創始者の生涯を描いたフィクションだが、ドラマチックな一生を小説としてゆったりと読めるよう綴(つづ)ってある。
(3)は軽い読書だ。軽さが身上である。いくつものジョークを追ううちに国際情勢が見えてくるところがみそ。日本人には欠けている視点である。
著者:マーガレット アトウッド
出版社:岩波書店 価格:¥ 2,940
著者:マーガレット・アトウッド
出版社:岩波書店 価格:¥ 2,940
著者:宮尾 登美子
出版社:中央公論新社 価格:¥ 1,890
著者:名越 健郎
出版社:新潮社 価格:¥ 714