[掲載]2009年4月26日
■ジーンズで知る貧困・環境問題
私も若い頃から、すり切れるまではいては、ジーンズを楽しんでいる。だが1本のジーンズが、綿花栽培と綿摘み、綿繰り、綿糸紡績と染色、機織りと洗い・研磨などの加工、デザイン、縫製など多くの工程を経ていることをどれほど理解していただろうか。
綿は、ジーンズなど衣料品に変身するために、生産の工程ごとに国・地域を渡り動く。縫製にしても、パーツの縫製、パーツを縫い合わせる最終工程の縫製と、国を移して行われる場合もある。コスト削減のために、綿花栽培や縫製は、アフリカ・アジア・中南米の低賃金の地域で行われることが多い。
著者はそんなグローバル経済化した「デニムの道」を、数年にわたり精力的に取材した。
カスピ海西岸のアゼルバイジャンでは、綿花農場、綿選別技師を訪ねる。そこで、綿肺症(めんはいしょう)という重大な職業病を目にする。イタリアでは、フランスのファッション市場を目標にすえるデザイナーとデニム工場を取材し、フランスでの展示会にも同行する。だが、デニムの染色や加工にどのくらい化学薬品や染料が使われるのか、綿花生産の膨大な農薬使用とあわせて、環境問題の深刻さを知る。
カンボジアでは、ジーンズの縫製工場の2人の女性工員に密着取材。不安定な雇用と低賃金のもとでの苦闘、その中での女性の社会的自立の困難を問う。ジーンズの縫製については、中国の深センの縫製工場で、世界的な基準による工場監査実施の過程を観察する。しかし、その背後にはなお、世界に広く残る搾取工場(スウェットショップ)の問題があると指摘する。
本書は04年秋、オーガニックコットンのジーンズで評価されているニューヨークの著名デザイナーのオフィスに、衣料産業を通してのアフリカ支援を計画するロックスターのボノが訪れるところから始まる。環境保護や貧困地帯救済を目指す慈善運動家、デザイナーらによるオーガニックコットンを用いた衣料品普及活動が、様々な難問を乗りこえ、新しいデニムの道を切り開くかもしれない。
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矢羽野薫訳/Rachel Louise Snyder 米国のジャーナリスト。
著者:レイチェル・ルイーズ スナイダー
出版社:エクスナレッジ 価格:¥ 2,100