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日台関係史 1945‐2008 [著]川島真・清水麗・松田康博・楊永明

[掲載]2009年4月26日

  • [評者]天児慧(早稲田大学教授・現代アジア論)

■日台の歴史概観する初の体系的学術書

 台湾はかつて日本の植民地だったことを知らない人も増えてきている。また日台関係はしょせん日中関係の裏面史でしかないと思っている人もいる。台湾の視点から、日台関係のみならず、日中関係、米台関係をとらえる書物はこれまでなかった。本書は40代の気鋭の専門家による初めての体系的な学術書である。基本的には1945年以降、現在までの日台の歴史を概観したものである。ただ時系列的に事実を紹介しているだけではなく、論争的なイシューを網羅し、理論的な解説がなされ内容が豊富である。

 幾つかの興味深いポイントを紹介する。(1)日本と台湾の関係は49年に中華民国が台湾に移動して以来、「日華関係」が前面に出たが、日本植民地時代に源流をもつ「日台関係」は常に内在し、「日華・日台関係」という二重性が基本枠組みとなった。(2)日中国交正常化、日華断交によって「72年体制」の原型がつくられた。が、台湾側はそれ以前から「政経分離」方式を想定し、経済貿易文化や領事業務を行う機構の設置を模索していた。実務外交に徹するその後の基本姿勢の始まりである。国際社会への参加では「チャイニーズ台北」という名称を用いる、いわゆるオリンピック・モデルができた。それはアジア開発銀行、APECなどへの台湾参加にも適用された。中台関係のある種の「妥協」であるが、当時勢いのあった日本の役割は小さくなかった。(3)91年以降、李登輝主導で中華民国の「台湾化」が進められた。天安門事件は中国「独裁国家」の印象を与え、逆に「民主化する台湾」のイメージが強まり、国際空間を広げるチャンスを得た。90年代前半、日台「ハイレベル接触」も増大し、「日華関係」と「日台関係」は逆転していったと見る。(4)日華・日台関係では蒋介石や李登輝のような象徴的人物の役割が大きい。

 (5)国際関係から90年代以降の日台関係をみると、二重の戦略的三角関係に着目すべきである。特に「米中台」の三角関係は96年の台湾海峡危機のように日台関係を安全保障の視点から捉(とら)えなおす契機になった。「米日台」の三角関係は、97年日米安保再定義、台湾にかかわる「新ガイドライン」が打ち出されアジアの安全保障面に影響を及ぼした。小泉政権時代には日米同盟の強化、「台湾海峡の平和的解決」を重視という戦略的明確さが強調され、二重の三角関係は微妙に融合し始め、「日米・中・台」という新たな三角関係が浮上した。今日、馬英九政権の登場によって、中台交流の進展が顕著になってきた。「統一か、独立か」という中台関係に強く規定された従来の日台関係とは異なるシナリオが問われている。

 日台関係史は日本外交の本質を映し出す鏡でもあり、時として日中関係のある部分を主導的に動かすダイナミックさを持つ。本書では斬新な解釈も多々見られ、資料の裏付けもしっかりしており、今後この分野をリードするテキスト的な研究書になると言ってもよい。

    ◇

かわしま・しん 68年生まれ。東京大学准教授。しみず・うらら 68年生まれ。桐蔭横浜大学教授。まつだ・やすひろ 65年生まれ。東京大学准教授。ヤン・ヨンミン 64年生まれ。台湾大学教授。

表紙画像

日台関係史 1945‐2008

著者:川島 真・松田 康博・楊 永明・清水 麗

出版社:東京大学出版会   価格:¥ 2,940

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