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テレビの青春 [著]今野勉

[掲載]2009年5月17日

  • [評者]松本仁一(ジャーナリスト)

■正体定まらぬ怪物、全力で挑んだ若者

 テレビ草創期、まだ正体の定まらないその怪物と全力で格闘した若者たちがいた。これは、その一人による自伝的な群像の記録である。

 テレビ放送が始まったのは1953年。吉田茂首相のバカヤロー解散があった年だ。TBS(当時はラジオ東京テレビ)開局が55年。著者のTBS入社は59年。NHKの「バス通り裏」が人気を集めていた。

 入社の4月、皇太子(現・天皇)のご成婚があった。いきなり秒単位の仕事の中に放りこまれる。以来、連続700日、1日の休みもない。疲労困憊(こんぱい)、仮泊の旅館で寝たばこからボヤを起こし、水をかけられても目を覚まさないほどだった。

 そんな新入りAD(アシスタント・ディレクター)たちが、「テレビに何ができるか」で寝ても覚めても激論をかわすのである。生硬な観念論で意気込みばかりが突っ走るのだが、全員が真剣だった。

 セリフらしいセリフも入れずにドラマをつくり、視聴者から「音がしない」といわれる。会社から文句が出れば、20歳代半ばの若造が部長や局長と平気でやりあう。

 著者が本格的に連続ドラマとかかわるのは65年、TBSの看板番組「七人の刑事」である。私はそのころまだ学生でテレビを持たなかったが、あのテーマ曲は覚えている。芦田伸介、菅原謙次といった豪華キャストで、人気の番組だった。著者はそれさえスター俳優を無視して心理劇に仕立ててしまい、視聴者から猛抗議を受けるのである。

 彼らの感性は、やがて政治のマグマとぶつかってしまう。それが成田事件だ。68年、空港建設反対運動の住民を、取材車に便乗させた。TBSは集中攻撃を受け、社内処分が出る。それが今度はTBS闘争へと発展していくのである。

 彼らは現場から次々に外されていく。時代が変わり始めた。

 70年、著者ら7人がTBSをやめ、独立プロダクション「テレビマンユニオン」を発足させた。管理職とスタッフが別々に存在するテレビ会社ではなく、「テレビ番組のスタッフが経営もする」会社をつくろうとしたのである。大阪万博が開かれた年だ。著者のTBS入社から11年がたっていた。

 今、テレビは異端から主流に変わった。就職活動の学生が「マスコミ」といえば、それは新聞ではなくテレビを指す。しかし主流となってテレビは緊張感を失った。実験を忘れ、見あきた一発芸をたれ流すメディアになり下がりかけている。

 テレビの青春と自分の青春が重なり合う僥倖(ぎょうこう)にめぐまれた、と著者はいう。しかし豊富なディテールを伴ったその青春の書は、時代史としても十分に価値のある内容だ。

 そんな昔のこと興味ない、どうせじいさんの思い出話だろ、という若者たちがいるかもしれない。しかしそういう若者たちにこそ読んでほしい。失敗を恐れず自分たちの場をつくろうとするのは、いつの時代でも素晴らしく面白いことなのだ。

    ◇

こんの・つとむ 36年生まれ。演出家、脚本家。59年ラジオ東京(現TBS)入社。70年に仲間とテレビマンユニオンを創立し、「遠くへ行きたい」などを演出した。現在、取締役副会長。著書に『テレビの嘘(うそ)を見破る』など。

表紙画像

テレビの青春

著者:今野 勉

出版社:エヌティティ出版   価格:¥ 2,940

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