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司法官僚―裁判所の権力者たち [著]新藤宗幸

[掲載]2009年10月18日

  • [評者]高村薫(作家)

■驚くべき最高裁事務総局の実態

 公害訴訟や公共工事の差し止め請求訴訟などでいつも住民側の原告適格が問われ、門前払いになることが多いのはなぜか。国政選挙の一票の格差をめぐる訴訟で、いつも「合理性を欠くとまではいえない」という判決になるのはなぜか。裁判所が市民ではなく、国や行政のほうを向いているのはなぜか。日ごろの「?」に駆られて本書を開くと、見えてくるのは裁判と裁判官を統制する司法行政機構のピラミッドと、その元締たる最高裁事務総局の存在である。

 私たちはそんなものがあるのも知らず、先の司法制度改革からも漏れた司法官僚たちの支配は、三千五百人の裁判官たちの任用、人事、処遇はもちろん、判例や法令解釈にまで及ぶ。本来個々に独立しているはずの裁判官が行政機構をつくって自らの権益を守り抜く、その密室性には仰天するほかないが、この実態はたんに裁判官の独立性を阻害しているに留(とど)まらず、市民の不利益そのものだと著者は書く。本書は、あくまで一般向けに書かれている。現行の情報公開制度さえ及びがたい裁判所の実像に、市民の問題として向き合ってみるチャンスである。

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