みんなのマンガ学

(みんなのマンガ学)グーグーだって猫である 命の重みにじむ現実描写

2010年05月24日


 美少女キャラクターに猫の耳やしっぽをつけ、可愛らしさと気まぐれでミステリアスな印象を加える手法の始まりは、大島弓子の「綿の国星」(1978〜87年)にある。いつか人間になれると信じる子猫が主人公で、その自意識の表現として子猫は猫耳をつけた少女の姿で登場。猫を単に擬人化するのでなく、猫からみた世界を現実と交錯させ、読者を心地よく幻惑するのだ。
 本作は、同じ大島のエッセーマンガ。現実の出来事を淡々と描きながら、長年連れ添った愛猫「サバ」の死や、本人のがん手術と闘病など命の重みが端々ににじむ。愛猫に死別した飼い主にまま起きることだが、捨て猫や野良の子猫を引きとり、猫たちの命を背負っていく。その結果、家の中には最大時で14匹の猫が暮らし、庭で野良猫の面倒もみる。野良猫の餌付けには賛否両論があるが、その奮闘ぶりにハラハラさせられ、命にとことん向き合う作者の覚悟に頭が下がる。
 そんな作者を支えるのは心優しい周囲の人々と、「んるるる」と鳴き、人なつこく肩に飛び乗ってくる愛猫「グーグー」。増え続ける猫を泰然と受け入れるグーグーのマイペースぶりあってこその大所帯だ。本作では、サバ以外の猫は人間の姿にならないが、猫たちの性格や行動はとても人間臭い。キャラクターとしての猫の魅力を堪能させてくれる作品である。
 (京都国際マンガミュージアム研究員 表智之)

 ▼次回は「アタゴオル物語」の予定です。

 <グーグーだって猫である>
 1996年から角川書店「ヤングロゼ」連載、現在は「本の旅人」で連載中。第12回手塚治虫文化賞短編賞を受賞。2008年秋には小泉今日子主演で実写映画も公開された。

 【写真説明】
(C)大島弓子/角川書店

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