この人に聞きたい 本の話

「生き方自体を変えるような、とんでもなく刺さる言葉って、本の中にある」 オードリー・若林正恭さん

2011年04月28日

わかばやし・まさやす 1978年生まれ。2000年デビュー。春日俊彰さんとのコンビ「オードリー」でツッコミ、ネタ作りを担当。2008年の「M-1グランプリ」で人気が爆発、以降テレビ・ラジオで多くのレギュラー番組を抱える。著書に、『オードリーの悪いようにはしませんよ』、『オードリーのオールナイトニッポン一年史』など。

文芸誌『ダ・ヴィンチ』でエッセーを連載、『自分の中に毒を持て』(岡本太郎)の推薦文や『オレンジ・アンド・タール』(藤沢周)の解説も手がける人気お笑い芸人、オードリー・若林正恭さん。今やテレビで見ない日はないと言えるほどの大活躍ですが、不遇の時代も長く、つらいときは本に救われたこともあったそうです。そんな若林さんの人生・考え方に大きく影響を与えた本についてお聞きしました。


村上龍のコラムに衝撃

――本を読むようになったキッカケは?

 1996年に起きたペルーの日本大使公邸占拠事件について、ペルー軍の突入は主権侵害で、そのことに対して抗議しない日本の政府はおかしいと批判する村上龍さんのコラムをたまたま読んだんです。僕もこの事件の解決に疑問を持っていたので、こんなこと言える人がいるんだと思って衝撃を受けて、それでこの人の本を読んでみようと思ったのがキッカケです。それからどんどん本を読むようになって、『限りなく透明に近いブルー』に始まり、村上さんの本で読んでいない本はほとんどありません。大学生の頃は時間も膨大にあったし、文学部の国文学科だったので、当時流行っていたものから文豪作品まで結構読んでいました。

――今はどんな本を読んでいますか?

 ちょうどいま電子書籍の『歌うクジラ』(村上龍著)をiPadで読んでいます。音楽が入っているし、絵が動くものもあるし、いわゆる「本を読む」というのとはちょっと違って面白いですね。電子書籍は初めてで、もっと疲れるのかなと思っていましたけど、思ったより目に優しいし結構読みやすいです。荷物も減らせるし、ラクですね。
 でも、電子書籍ってまだ数が少ないと思う。読みたい本を探したけど、電子書籍にはなっていなかったので、もう少し増えたらいいと思います。あと、僕はお風呂で本を読むことも多いので、個人的には(端末に)防水機能があれば嬉しいですね。

――どのように本を選んでいますか?

 本屋に行くのが好きで、本のオビで決めることが多いです。あと、「ジャケ買い」じゃないですけど、平積みされていて気になった表紙で選んで、冒頭10ページくらい読んで面白そうだと思ったものを買うんです。何冊も読んで1冊も買わないことも多いですけど(笑)、本屋さんにいるのが一番好きです。


今でも自分の中にある言葉

――どんな本をよく読みましたか? 好きな作家は?

 村上龍さん、村上春樹さん、藤沢周さん、島田雅彦さん、田口ランディさん、よしもとばななさん、最近だと伊坂幸太郎さんとかです。
 村上龍さんが『無趣味のすすめ』という本の中で、「アイデアは組み合わせであって、発見などではない」と書いているんですね。自分が考えつくものは、自分の頭の中に入っていることと何かのミックス、掛け合わせでしかないと書いてあって、それを読んで、すごく気持ちが楽になって物事を考えやすくなったんです。それまでは「今までにない漫才を作らなきゃ」とか気負っていましたが、そもそも「漫才」という形の中で、「ボケとツッコミ」という形を借りているわけだから、その時点でもう新しいことではないなと気付かされて。一度この言葉が自分の中に入って、今でもずっとあるんです。

――他にも、影響を受けた本や言葉はありますか?

 他だと、岡本太郎さんの本は好きです。読むようになったキッカケは、先輩芸人のじゅんごさん。芸人の仕事が全然うまくいかなくて一番苦しい頃、屁理屈ばかり言っていた自分に、「お前には岡本太郎がはまるんじゃない?」ということで『強く生きる言葉』を薦められて。その中の「挑戦した不成功者になれ」という言葉にどーんときました。
 空気を読むということがマストになっている風潮の中で、「自分はこういうことをしたい、するんだ」という点でぶれなかったというのがすごい。僕はぶれてしまう人間なのでそういうところに惹かれたし、だからこそ岡本太郎さんを好きな人が多いんだと思います。
 それと、この前読んだ平野啓一郎さんの『ドーン』という本の中に「ディヴィジュアル」という言葉があったんです。「ディヴィジュアル」っていうのは環境とかその場所に合わせて自分のチャンネルを変えていくことだって書いてあって、そういうのが自然なんだと。僕は深夜のラジオ番組「オールナイトニッポン」のキャラを、昼の「いいとも」でも出せばいいじゃんってよく言われるんですよ。でも、相方の春日と二人しかいない深夜のラジオと、他に5人も出演者がいるお昼の「いいとも」で、僕は自分を変えちゃう。中学生の頃とかって友達と下ネタトークをするけど、親の前ではしないっていうのと一緒のことですよね(笑)。でもそういうのを読むと、「それでいいんだ」って思えるじゃないですか。そういう生き方自体を変えるような、とんでもなく刺さる言葉って、本の中にあるんです。

――いま日本はもっと元気が必要ですね。

 僕は本は絶対必要なものだと思っていて、本を読むとネガティブな気持ちが前向きになるし、めちゃくちゃ元気が出るんですよ。まだ全然仕事がなかった頃、電気代も払えなくて電気を止められて、まともなご飯も食べられない時代に、本を読んで「よし、やるぞ!」って思えた。でもそのやる気が続くのって3日くらいで、1冊読み終わったときのあの気分が一生続くわけじゃないんですが、前に進む気持ちを何度でも湧き上がらせるものが本なんです。元気になれたり、明るくなれるほうがいいですよね。だから、僕はそういう本を読みたいし、みなさんにもそういう本に出合って欲しいですね。

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