売れてる本

ジェノサイド [著]高野和明

2011年07月31日

■「ど真ん中」のエンタメ小説

 筋金入りのエンターテイナーが、2年半の時間を取材と執筆に費やして書き上げた力作である。今月発表のあった第145回直木賞の候補となり、「本の雑誌」の「2011年上半期ベスト1」にも選ばれた。それらが発表される前からすでに話題となっており、今も加速的に部数を伸ばしている。
 とにかくスケールが大きい。亡父の遺志により難病の治療薬の開発を始めた東京の大学院生の青年。特殊任務によって侵入したコンゴの森林地帯で、想像を絶する生物を目の当たりにした傭兵たち。極秘裏にある計画を進めるワシントンの人々。彼らが直面している“人類の危機”とは一体何か。衝撃に次ぐ衝撃の展開の中にサスペンスとミステリーとSF、そして極上の人間ドラマが詰まっている。「数年前、高野さんが書店員さんから“次はど真ん中のエンタメを書いてください”と書店訪問の際に言われたそうです。ご本人も“やりたいですね”と話していたんですが、その答えがこの本だと思います」と担当編集者の足立雄一さん。
 刊行は今年の3月下旬。足立さんによると火がついたきっかけはツイッター上の書店員のつぶやき。「5月頃から神奈川県の数店舗の書店員さんたちがこの本を絶賛してくださり、書店同士のやりとりも盛り上がっていったんです。そこから広まって他の店舗も応援してくれるように。今回ほどツイッターの力を感じたことはありません」。刊行当初の読者層は85%が男性だったが、最近では65%。女性読者がジワジワと増えている。
 タイトルの意味は“大量殺戮(さつりく)”。本書は戦争の歴史といった深刻なテーマも含む。それでも人は知を持って信じあい助け合えるのではないかと思わせる、希望を残すラストが爽快。誠実さも感じさせる娯楽小説だ。
    ◇
角川書店=1890円、8刷11万部



ジェノサイド

著者:高野 和明
出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)

表紙画像

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