この人に聞きたい 本の話

『「のび太」という生きかた』なぜうける 横山泰行さんに聞く

2011年09月05日

よこやま・やすゆき  1942年生まれ。1976年東京大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。教育学博士。現在、富山大学名誉教授。著書に『ドラえもん学』(PHP研究所)など。

 のび太は勉強も運動も苦手で、困ったことがあると「ドラえも~ん」と泣きついてばかり。そんなのび太が憧れのしずかちゃんとの結婚という夢をかなえることができたのはなぜなのか。「ダメ人間」と思われがちなのび太の生き方に人生のヒントを見いだす『「のび太」という生きかた』(アスコム)が、昨年から話題になっている。(アサヒ・コム編集部 梅本響子)

 『「のび太」という生きかた』は、「ドラえもん学」を提唱する富山大学名誉教授、横山泰行さんによって2004年に出版された。コミック版の「ドラえもん」の具体的なエピソードを例に挙げながら、自力で問題を解決しようとする姿勢や、どんなことがあっても夢をあきらめない気持ち、周囲を思いやる心などのび太の長所に注目し、「夢のかなえ方」を探る。

 04年当時の出版部数は1万部にとどまっていたが、05年に書かれたある中学生の読書感想文が昨年5月からネット上で話題になったことをきっかけとして増刷がかかり、計15万部を超えた。

 横山さんは、「リーマン・ショックや今回の大震災以降、自分の足元を見つめて生きていこうという傾向が強くなっているように思います。話題になった感想文自体は2005年のものでしたが、いまの時代状況とのび太の生き方が合っているのでは」と人気の理由を見る。10代からの反響が多いというが、「子どもたちにとっては、自分の分身みたいな存在なのかもしれません」。

 横山さんが「ドラえもん」の研究を始めたのは13年前。研究テーマだった「子どもの遊びの変遷」を分析するうえで、連載が長期にわたる「ドラえもん」は格好のテキストだった。そこから「ドラえもん」のとりことなり、今では「ドラえもんの研究は生きがい、ライフワークです」と熱を込めて語るほどに。自己啓発本の印象が強い『「のび太」という生きかた』だが、横山さんにとってはこれも奥深い「ドラえもん」研究テーマの一つだ。「ドラえもんには、例えばひみつ道具の分析や海外での受容の違いなど、さまざまな研究テーマがあります。ドラえもんに魅了された人たちがそれぞれの切り口で研究することで、ドラえもんが生まれた2112年まで読まれ続ける『古典』として、残していきたいと思っています」。横山さんの研究によって、夢をかなえるのび太の生き方が注目を集めたように、多くの人を魅了し続ける「ドラえもん」は、確実に「古典」へと近づいていると言えるだろう。

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