人間文庫(週刊朝日)

ガロワ正伝 革命家にして数学者 [著]佐々木力

2011年11月04日

■禁錮刑に童貞死! 悲憤のガロワ伝

 ガロワとはガロワ理論で知られる仏の数学者(1811~32年)。わずかハタチで没した。生前は二度受験失敗したり数学論文を紛失されたりと超不遇。そんな夭折の天才の書き下ろし評伝だ。
 ガロワの生きた時代にご注目を。生まれたのはナポレオン第一帝政後期。パリのリセ時代は反動的な王政復古で、教員養成校(改称を重ね、20世紀にはサルトル、フーコー、デリダらが輩出)に入学するや、今度は七月革命で立憲君主制に移行する。激動の時代は信念の人ほどワリを食う。町長だった父は王政復古で返り咲いた黒服(僧)の奸計で自死に追い込まれ、急進的共和主義者の息子は檄文を書いたとして風見鶏の校長に退学させられる。あげく政治運動で禁錮刑をくらい、恋愛がらみの決闘で童貞死。決闘は挑発されたもので、真の挑発者を告発する著者の筆は悲憤の安楽椅子探偵さながらだ。
 ガロワの「20歳で死ぬにはありったけの勇気がいる」とは、これ沈痛なる名セリフ。前夜に書いた遺書の一通が数学にも革命を起こした。どんな革命かって? 群論というか抽象代数学というか、ええいっ、武士の情けでこれ以上聞いてくださるな。横組み、数式入りの本書に詳しいです。

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