人間文庫(週刊朝日)

いまなぜ白洲正子なのか [著]川村二郎

2011年11月25日

■まるで女侍!野蛮で優雅な白洲正子

 著者は白洲正子を「怖いくらいに美しい」と書く。確かに虚飾の要なき骨格美人。生き方も背骨が通っていた。正子の晩年、親しく交わることのあった著者による評伝。
 樺山伯爵家の令嬢に生まれ、500坪超のお屋敷で育つ。小さい頃からお転婆で60000坪の御殿場の別荘では女ターザンぶりを発揮。14歳で米国に留学し、英国帰りの白洲次郎と19歳で結婚した。敗戦直後、吉田茂の側近として活躍の場を得た次郎に対し、正子に日が当たるのは随筆『能面』で読売文学賞を受賞した1960年代頃からだ。
 正子を語るにふさわしく、この評伝にも背骨が通る。正子に好きなことは「井戸を掘るつもりで、とことんやるといいよ」と言われた言葉を手がかりに、能や着物、骨董など和の美に分け入った正子の井戸掘りぶりを紹介するのだ。
 祖父は“肉を斬らせて骨を断つ”薩摩示現流の遣い手。本書の題名の由来はもちろん正子の『いまなぜ青山二郎なのか』だが、その青山を中心に小林秀雄らが集った“青山学院”での骨董修業は、ホモジニアスな集団に斬り込み、肉を斬らせて真髄を持ち帰った女侍を思わせる。元祖男前、野蛮で優雅なこんな女、もう二度と出てこない。

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