人間文庫(週刊朝日)

山本五十六 [著]半藤一利

2011年12月09日

■清武氏へのエール 散らない五十六になれ

 敗戦の夏、新潟県立長岡中学3年生だった著者は、講堂から先輩山本五十六の書の額が外されるのを寂寞の思いで見たという。初刊時の題名は『山本五十六の無念』。
 山本は没落士族の家に生まれ職業軍人に。ハーバード大学留学など海軍のエリートコースを歩み、1939年連合艦隊司令長官に就任。41年真珠湾の奇襲攻撃に成功、42年ミッドウェイ海戦で惨敗、43年敵機に待ち伏せされて太平洋に散る。享年59。長岡と言えば米を教育に投資した“米百俵”の地。逆境に耐え、言挙げせず、孤高の精神でことを成し遂げる。まさに山本の気風だが、その一方で著者はこうも書く。長岡人は忍耐がきれると「敢然と爆発する」と。日米開戦に反対するなど大局を見通していた山本がなぜ無謀な道を突き進んだのか。戦略の愚者達の大合唱の中で、戦術の奇才が日本的な仄暗い美学へ堕ちていく様を、著者は愛着と愛惜を込めて昭和史の中に位置づける。余談だが、東京ドームでは辛いことも苦しいこともこらえろという山本の名言「男の修行」が色紙や茶碗になって売られているとか。清武氏よ、散らない五十六になれ。本書に倣い、高校の後輩としてエールを送る。

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