人間文庫(週刊朝日)

金子みすゞ ふたたび [著]今野勉

2011年12月23日

■謎の死に迫る 天才詩人みすゞの真実

 著者は、金子みすゞのドキュメンタリー・ドラマで芸術選奨文部大臣賞を受賞(95年度)。その時、解きあぐねた謎に取り組む“宿題ノンフィクション”だ。
 (1)執念の特定、(2)新事実の発掘、(3)定説の覆し、と読み応え十分。(1)は山口県・現長門市仙崎の生誕地。土地台帳の閲覧など超地味な作業だが、探偵はついに凱歌をあげる。(2)実父は清国で馬賊に殺されたという逸話。国会図書館で当時の邦字紙に当たる。断念寸前、人情話を拾うコラムに名を発見。他殺ではなく急死だった。研究者達は調査の労を惜しんできたようだ。自然死なのに無縁墓に入れられた謎が更なる先祖を明かす。
 (3)は白眉。26歳で服毒死したみすゞの詩からその死生観に迫るが、私はいくつかの詩にニライカナイ(海の浄土信仰)を感じていたから、著者が提示する「宇宙観」は胃の腑に落ちる。光の常世への旅立ちだったかもしれない。夫に娘を取られるのを悲観してという定説は母性原理主義だし、最晩年の寄稿歴から夫が詩作を禁じたという説も疑わしい(1カ月前それを裏付ける発見のニュースも)。ここに書ききれないほどスリリング。天才詩人に尊厳死を取り戻させた文学探偵に乾杯。

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