■貧乏球団の大胆な組織改革
年俸の低い選手ばかりの集まりなのに、いつしか強豪チームと互角にわたりあうようになっていた大リーグの貧乏球団アスレチックス。その裏にはゼネラルマネジャーのビリー・ビーンの大胆な組織改革があった——この秋公開されたブラッド・ピット主演映画の原作ノンフィクション。日本でもロングセラーとなっていた1冊だ。
ビリーの改革の特徴は、打率よりも出塁率に着目するなど選手の評価基準を大幅に変えたこと。本書はその理論を丁寧に説くが、他にも読みどころは多い。「これまでのやり方をすべて疑い、ベテランたちの反発のなかで改革を実行していく。そのあり方は野球に関係のないビジネスマンにも通じるものがあります。10年前の実話でありながらも古びないのは、テーマに普遍性があるからでは」と担当編集者の大森春樹さん。2003年の単行本刊行当時にはスポーツノンフィクションとして売り出したが、ビジネス書としても好評を得た。06年に文庫化してからはオビでのアピールポイントを時世に合わせ、「組織改革」や「たった一人の勇気」など少しずつ変えてきた。メーンの購買層は30~40代の男性だが、9月ごろから映画の宣伝を全面に打ち出すと女性読者も増加。
ビジネスとはいえ数字だけで選手を取捨するのはドライな印象もある一方、無名選手の可能性を見いだしていく様子は痛快であり、採用された選手たちのエピソードも感動的。ビリー自身かつて大リーガーとして挫折を味わっており、その人生模様にも感じ入るものがある。しかし情に訴える書き方はしていない。著者は金融、スポーツに強いノンフィクションライターで、「客観性を保ちつつ巧みな構成で結論に導く。どの作品も質が高い」と大森さん。日本でもこの著者のファンは多い。
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中山宥訳、RHブックス・プラス・798円=10刷15万2千部




