著者に会いたい

海の向こうに本を届ける―著作権輸出への道 栗田明子さん

2012年01月15日

栗田明子さん(77)=鈴木好之撮影

■「出版は志」の言葉を胸に

 個人史がそのまま社会的、歴史的意味を帯びることがある。日本の出版物を海外へ。いまは当たり前に語られる道を切り開き、日本著作権輸出センターを創業した栗田さんの回顧録は、その幸福な例だろう。
 もともと、英文速記の仕事を生業にと考えた「実学」派。20代の終わりに東京で、当時世界最大の出版社だったタイム・ライフに入社したのが出版との縁の始まりだ。「新しい世界」で、新しい仕事の手がかりを見いだした。
 日本では、外国の出版物を翻訳して取り入れるばかりで、その逆はめったにない。可能性を探ろうと、タイム社を7年で辞めて渡米、出版社やエージェントを訪ねて「バイタリティーに満ちあふれた人たち」と出会う。「夢はかなうんです。材料はころがっていた。自分で見つけさえすれば」と、さらりと言う。
 本にはドイツのケルンで「本を行商中」の写真がある。1981年から3年間、ケルンを本拠に欧州各地を巡った。「行く先々に語り合える出版人がいて、楽しかった。結局、本より自分を売り込んでいたのかしら? 実績と認めてくださるものがもし私にあるとしたら、人とのつながりを大切にしてきたことが、それにつながったのかと思います」
 「出版は志があってこそ」。未来社社長だった故・西谷能雄氏の教えをいまも自分のものとする。世界の出版人と渡り合ってきたバイタリティーを表には見せない静かな語り口は、自分の来し方を客観的につづる文章にも通じる。電子出版や出版資本の寡占化など環境が激変する中、「道はまだ半ば。あとは後輩に託します」。
    ◇
晶文社・2520円

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