■オタク文化は夜明けでも熱い
いきなり私事で恐縮だが、初めて同人誌を作ったのは1981年、高校2年のときだった。雑誌作り自体の楽しさもさることながら、即売会などに参加することで世界が広がっていく感覚に高揚したのを覚えている。
それと同様の高揚感が、本作にもある。舞台は82年、オタクがまだオタクと呼ばれる前の時代。雑誌にイラストなどを投稿していたマンガ&アニメ大好き女子高生がマニアックな本屋で同志と出会い、同人活動に目覚めていく。さらには即売会でラムちゃんの仮装(まだコスプレという言葉は普及していなかった)をしてカメラに取り囲まれて、妙な快感を覚えたり。戸惑いながらも新しい世界に踏み込んでいく主人公のときめきが熱っぽく描かれるのだ。
作者自身の体験をベースにした自伝的作品だけに、あの時代の空気の再現度は高い。当時の雑誌、黒電話、禁煙でない駅、伝言板、高いコピー料金など、時代風俗の描写と注釈も充実。随所に登場するマンガやアニメのセリフ遊びやパロディーは若い読者にはわからない部分もあるだろうが、オタク文化黎明(れいめい)期を知る参考書としても好適だ。
しかし、やはり本作の主眼は若者が世界を獲得していく点にあり、それは今の若者にも通ずるはず。“普通”を旨とする非オタクにこそ読んでほしい。
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双葉社・680円




