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花森安治のデザイン 『暮しの手帖』創刊から30年間の手仕事 [編]暮しの手帖社

[文]森村泰昌(美術家)  [掲載]2012年01月22日

表紙画像 著者:花森安治、暮しの手帖社  出版社:暮しの手帖社 価格:¥ 2,310

 本書は、編集者花森安治が描いた「暮しの手帖」誌の表紙をはじめとする、様々なデザインワークを収録した美しい本である。「暮しの手帖」誌1世紀32号に花森が書いた文字「かあいい動物たち」にならえば、その類い稀(まれ)なる美とは、「かあいい美」だったと言い換えてもよさそうだ。権力をふりかざすのではなく、身の回りの生活のなかに見出(みいだ)せるささやかな体験や発見、それらを大切に育む精神が「かあいい」であろう。
 年譜によれば、花森は戦時中、国策宣伝の重要なポストについている。この経歴が深い心の傷となって残ったとすれば、戦後という時代を生きるにあたり、隠された強い影響となったとしてもおかしくはない。マッチョな戦争とは対極のフェミニンな「かあいい」の実現、これは花森にとって生涯をかける必要のあった、戦後の償いだったのではないだろうか。
 ところで花森の「かあいい」であるが、これは、昨今流行(はや)りの「カワイイ」のさきがけととらえていいのだろうか。答えは様々だろうが、確実に言えることは、花森の「かあいい」の特徴は、楽しさや明るさの中に、一抹の淋(さび)しさや哀愁やひかえめな態度が見られる点である。それは、経済の高度成長をめざし再び大国たらんと猛烈に働いた日本の戦後の果ての「カワイイ」とは根本的に異なっている。
 今、花森安治を知る。これは、洒落(しゃれ)たイラストを安穏と楽しむことではなく、花森流の「戦後」ビジョンの提案を噛(か)み締めることである。花森は戦争体験を踏まえた、「かあいい」革命家であり思想家であったと言うべきであろう。
    ◇
 暮しの手帖社・2310円

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