人間文庫(週刊朝日)

おひとりさまの老後 [著]上野千鶴子

2012年02月03日

■戦略家にして繊細 ベストセラーはフェミ本

 老後はみんな独居と、その心得を伝授する本書は、単行本で総計75万部を売り上げた。著者最大のベストセラーというだけでなく、フェミ本がこんなに売れたのも異例。え、老年学の本だろうって?自立(当事者主権)と連帯(知縁)を謳う本だもの。フェミ本でしょう。「老い」や「介護」を被せれば、それとは気づかれないというコスプレぶりが痛快だった。が、「団塊の世代以上の高齢者」という年金エリート層に宛てられた本だったため、現役世代には“持てる者のメルヘン”に感じられたのも事実。単行本から4年経ってみれば、年金の減額、受給開始年齢の引き上げ、増税などが論議されるお先真っ暗な世の中だ。
 同時期発刊の『フェミニズムの時代を生きて』(岩波現代文庫)と併せ読みすると面白い。女性学に携わった女学者3人のいわば“来し方行く末”鼎談で、『おひとりさまの老後』は介護現場の調査研究から生まれた副産物だが、ケアの問題は「不払い労働論」の続きだったと学者の矜持を明かしている。と同時にケアという弱者の思想を扱うのは、世に流布するフェミ強者と自分を差別化するためだ、と。戦略家にしてひどく繊細。やっぱりこの人はカッコいい。

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