人間文庫(週刊朝日)

ザ・ペニンシュラ・クエスチョン―朝鮮核半島の命運 [著]船橋洋一

2012年02月10日

■ブッシュvs.金正日 思惑乱れる北朝鮮

 この大著で思った。脳にも処女地があると。読み慣れない外交・安全保障分野のノンフィクション。金正日の訃報を受けて読み始めたが、読了する頃にはヘロヘロ。でも、今読んでよかった。
 ザ・ペニンシュラ・クエスチョンとは「朝鮮半島の課題」という意味。北朝鮮の核保有を巡り、日、米、韓、中、ロ、北朝鮮の六者協議で何が話し合われ、どんな駆け引きがあったのかを詳らかにする。ブッシュが金正日を「ピグミー」と呼べば、北朝鮮が「政治的低脳児」とやり返したというネタも面白いが、「共同声明」を目指して持久戦となった05年の模様(第11章)が特にスリリング。核放棄後の援助という順番にこだわる米国、同時だとごねる北朝鮮、拉致問題と切り離せない日本、折しも竹島・独島領土問題で日本と険悪になっていた韓国と、各国の思惑が入り乱れる。
 本書の親本刊行後、北朝鮮は核保有を認め、著者自身がこの文庫版で金正恩への権力継承が始まっていることに触れたとたん金正日が死去。現代史のノンフィクションは、まさに熟柿が落ちるタイミングで次の潮目を用意するようだ。というわけで本欄の担当も節目。末尾ながら、これまでのおつきあいに感謝致します。

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