新書の小径(週刊朝日)

欲情の文法 [著]睦月影郎

2012年03月16日

■エロ小説はファンタジーの世界なのだ

 子供の頃、エロ本が読みたくてもなかなか手に入らないから、やむなく自家発電のために自分で書いたり描いたりします。私もやりました。描くほうは早々に挫折して(人間二人がからんでる絵って、ものすごくむずかしい)、書くほうに狙いを絞ったが、文章でもエロは難しかった。へんに気取ったようなのでは到底抜けるものではないし、抜こうと思うと果てもなく下卑てしまう。上手な作家様のお書きになったものを楽しもう、早く大人になって、とこちらも早々に見切りをつけた。そして大人になって、贔屓の作家も見つけて楽しんでいる。
 なのでこのような「官能小説書き方指南本」は今の自分には不要なのだが、なぜ幼い頃に失敗したのか知りたく読んでみた。
 めくったとたん「(1)避妊はいらない(2)生理中ということがない(3)処女でもイク」と太字で書いてあって笑った。エロ小説ってほんとそうだ。私の好きな先生の作品でも、中学生の処女がバンバン初体験でイッている。そんなバカな、とか女をなんだと思ってんだ、などと言ってもムダだ。「ファンタジーの世界なんです」と睦月さんも言っている。読み進めると、ふつうの小説というか文章に援用できそうなテクニックがたっぷり書いてある。セックスまでの高まりを演出しろとか、濡れ場ではあっというまに終わらないようにまずフェラチオで一回抜くのは定番、とか。確かに私が読んでるやつはほとんどそうだ。出しても出してもまた出るし、イッてもイッてもまたイク。さらに、ヨガリ声のバリエーションがズラリと並び、字面を見てるだけで抜けそう。
 すべて見渡して「分かりやすい言葉や比喩が万人ウケする」というのが大事だろうと思った。そうなんです! 自分で書こうという人間はつい「自分だけにしか書けないモノを」とか思って、結果ひとりよがりな形容詞を使ってしまい、エロから遠く離れてしまう。分かりやすい言葉。これは拳拳服膺(けんけんふくよう)すべきだ。とても役に立つ本です。

関連記事

ページトップへ戻る