暮らしのお役立ち

つなみ 風花 胡桃の花穂 [著]佐藤フミ子

2012年03月27日

 大震災に遭うとは、被災後を生きるとは、どういうことなのか。岩手県陸前高田市で東日本大震災に遭った83歳の著者が避難生活を送るなか、大学ノートに鉛筆で書き付けてきた五七調の詩の自選集。
 著者は海岸でワカメの芯抜き作業中に被災。迎えに来た夫の車に飛び乗って難を逃れたが、著者夫婦を捜しに出た長男が孫の目の前で流された。自宅を失い、夫婦で避難所を転々として仮設住宅へ。慣れぬ暮らしに体調を崩した夫も昨年11月に亡くした。
 《「早ぐコ」 津波がくるぞと 老いし夫(つま) 軽トラに乗る 何も持たずに》《目の前で 父さらはれし 男孫 海が敵(かたき)と 車を叩(たた)く》
 《避難所に 絵手紙習ふ 束(つか)の間を 北国の春 涙でうたふ》《避難所に 「ダーウィンがきた」の テレビ観(み)る 津波に逝(ゆ)ける 息(こ)が好みしに》
 短歌教室に通い、朝日新聞などの歌壇に投稿していた著者と、ジャーナリスト森住卓さんの出会いが出版のきっかけ。森住さんは「悲しみの深さと重さはいつまでも伝えていかなければ」という。
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 凱風社、税抜き1000円

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