話題の新刊(週刊朝日)

ルーズヴェルト・ゲーム [著]池井戸潤

2012年04月20日

 町工場を舞台にした『下町ロケット』で直木賞を受賞した作家の最新作。中堅電子部品メーカーの青島製作所と、その野球部がふんばりをみせる爽快な企業小説だ。
 米国発の金融不況で、青島製作所は受注量を減らし、値下げも余儀なくされている。銀行から追加融資を引き出すためにはリストラの徹底が必要で、年間3億円かかる野球部の廃部は必至。だが、部員の多くは契約社員である。物語は、ライバル企業のミツワ電器に優位にも見えるように進んでいく。他社製品の類似品を作って儲けてきたミツワに対し、リスクを冒しても新製品を開発する青島製作所。ミツワからの合併交渉に、青島のカリスマ的創業者でもある会長は、自身がヘッドハンティングした社長に経営判断をゆだねつつも釘をさす。工場が作っているのは働く者の人生であり夢なのだと。
 逆境にある野球部を通して、皆のこころがひとつになる。野球好きのF・ルーズヴェルト大統領は、野球の試合で一番面白いスコアは「8対7」といった。まさに絶望と歓喜は紙一重だ。

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