コミック

はるまげ1 [作]なにわ小吉

2012年07月08日

■笑い健在、驚きと脱力が交錯

 ギャグ漫画家とは因果な職業である。ストーリーものよりページ数が少ない分、原稿料も少なく単行本もなかなか出ない。そのくせアイデアの消耗は激しく、パンチドランカーならぬギャグドランカー(何が面白いのかわからなくなる症状)に陥って、描けなくなる作家もいる。
 90年代に『王様はロバ』で不条理ギャグブームの一翼を担ったなにわ小吉も「そういえば最近見ないな」という作家の一人だった。そこに忽然(こつぜん)と出現したのが本書。作者コメントに〈完全な新刊を出すのって何年ぶりだろ……〉とあるが、おそらく01年の『くぴっと一杯』2巻以来11年ぶりではないか。
 とある惑星で原始時代のような生活を送る兄弟が、その星の〈キャプテン選挙〉当選をめざす……なんて設定はこの際どうでもいい。注目すべきは、奇妙な動植物や文化といった世界観そのものだ。まるでマヨネーズの〈マヨヨの実〉、ナゾの覆面男が発明した〈服〉など、現代文明を原始時代に混入させた描写も楽しいが、紙、ビニール、貨幣などが生み出される過程の奇想天外さには目を見張った。
 ギャグというより藤子・F・不二雄のSFに近い。それでいて突き放したような笑いも健在で、いろんな意味の驚きと脱力が交錯。絵柄もより可愛くなっての新境地に拍手を贈(おく)りたい。
    ◇
 小学館・440円

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